大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 平成8年(行ケ)267号 判決 1998年9月17日

アメリカ合衆国

ペンシルバニア州 ピッツバーグ ワン ピーピージー プレース

原告

ピーピージー インダストリーズ インコーポレーテッド

代表者

リタ バーグストローム

訴訟代理人弁理士

浅村皓

小池恒明

高松武生

木川幸治

安藤克則

岩井秀生

東京都千代田区霞が関三丁目4番3号

被告

特許庁長官

伊佐山建志

指定代理人

松本悟

高梨操

後藤千恵子

廣田米男

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

この判決に対する上告のための付加期間を30日と定める。

事実

第1  原告が求める裁判

「特許庁が平成3年審判第14039号事件について平成8年6月21日にした審決を取り消す。」との判決

第2  原告の主張

1  特許庁における手続の経緯

原告は、昭和63年7月14日に発明の名称を「低放射率金属酸化物被覆の形成方法」とする発明(後に「フロートガラスの表面上に酸化錫被覆を付着させる方法」と補正。以下「本願発明」という。)について特許出願(昭和63年特許願第176202号。1987年9月30日アメリカ合衆国においてした特許出願に基づく優先権を主張)をしたが、平成3年3月22日に拒絶査定を受けたので、同年7月15日に拒絶査定不服の審判を請求し、平成3年審判第14039号事件として審理された結果、平成6年6月22日に特願公告(平成6年特許出願公告第47482号)されたが、特許異議の申立てがあり、平成8年6月21日、特許異議の申立ては理由がある旨の決定とともに、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決を受け、同年7月24日にその謄本の送達を受けた。なお、原告のための出訴期間として90日が付加された。

2  本願発明の特許請求の範囲(別紙図面参照)

(1)a.ガラス基体を熔融金属浴上に支持し、

b.熔融金属浴及びガラス基体上に非酸化性雰囲気を維持し、

c.前記熔融金属浴上に支持されていない表面上で、前記ガラス基体と被覆反応体として蒸気状の有機錫化合物とを接触させ、そして

d.ガラス基体が非酸化性雰囲気下、金属浴上に支持されている間に、前記被覆反応体を酸素含有キャリァーガスと共に基体表面に供給し、熱的に反応させ、前記ガラス表面上に酸化錫膜を付着させる、

諸工程からなる、フロートガラス表面上に酸化錫被覆を付着させる方法。

(2)熔融金属が錫を含む、請求項1に記載の方法。

(3)雰囲気が窒素を含む、請求項1に記載の方法。

(4)有機錫化合物がモノブチル三塩化錫からなる、請求項1に記載の方法。

(5)ガラス表面の温度が621~677℃(1150~1250°F)の範囲にある、請求項1に記載の方法。

(6)キャリアーガスが空気を含む、請求項1に記載の方法。

3  審決の理由

別紙審決書「理由」写しのとおり

4  審決の取消事由

審決は、一致点の認定及び相違点の判断を誤った結果、本願発明の進歩性を否定したものであって、違法であるから、取り消されるべきである。

(1)一致点の認定の誤り

a 審決は、本願発明の特許請求の範囲(1)記載の発明(以下「本願第1発明」という。)と引用例1記載の発明は「フロートガラス表面上に酸化錫被覆を形成させる方法」である点で一致する旨認定している。

しかしながら、本願第1発明が、フロートガラスの表面に酸化錫被覆を付着させることによって、「彩色光を示さない高透過性で低い放射率をもつ赤外線反射性被覆ガラス」を得るものであるのに対し、引用例1記載の発明は、高熱ガラスの表面中に酸化錫を溶解させ、ガラス表面の性質を改変することによって、導電特性など所要の表面特性を持つガラスを得るものである。したがって、両者は、対象とするガラスの種類を異にする、全く別個の系統に属する技術であるから、審決の上記認定は誤りである(高熱ガラスの表面に金属被覆を付着できないことは、本出願前の周知事項である。)。

この点について、被告は、本願発明と引用例1記載の発明が、処理されるガラス表面の温度において重複する旨主張するが、引用例1記載の発明では、処理金属の融点ではなく、ガラスの粘性が重要であって、「通常、(中略)ガラスが800℃~950℃の温度範囲にある浴の高熱端と称する浴の部分に応用される」(4欄21行ないし23行)のであるから、被告の上記主張は失当である。

b また、審決は、本願第1発明と引用例1記載の発明は「熔融金属浴及びガラス基体上に非酸化性雰囲気を維持し、(中略)非酸化性雰囲気下、(中略)ガラス表面上に酸化錫被覆を形成させる」点で一致する旨認定している。

しかしながら、本願第1発明が「非酸化性雰囲気下、(中略)ガラス表面上に酸化錫被覆を付着させる」のに対し、引用例1記載の発明は「酸化性条件下でガス状化合物による処理を行う」(4欄3行、4行)のであるから、審決の上記認定は誤りであり、そのように誤った認定を前提とする請求項3に関する判断も誤りである(ちなみに、引用例1の「窒素雰囲気のような不活性保護雰囲気を溶融金属浴の上方の上方空間内に維持する。」(4欄39行、40行)、「浴上の雰囲気を(中略)窒素雰囲気とする。」(10欄13行、14行)、「浴の上方空間に(中略)供給される保護雰囲気中に(中略)水素を導入する。」(10欄17行ないし19行)との記載は、金属酸化物をガラス表面中に溶解させた後の処理に関するものである。)。

(2)相違点1の判断の誤り

審決は、相違点1は、引用例2の記載を考慮すると、当業者が容易に選定しうる材料の選択にすぎない旨説示している。

しかしながら、引用例2記載の発明は「透明な曇りのない酸化すず被膜の形成方法」に関するものであって、本願第1発明あるいは引用例1記載の発明とは技術内容を異にするのみならず、引用例2には、同発明では四塩化錫などの無機錫化合物は避けるべきであり(1頁15行ないし18行)、三塩化モノブチル錫などの有機錫化合物も好ましくないが、唯一、三塩化モノフェニル錫のみが特定の蒸着条件下で優れた被膜を与える(5頁下から10行ないし1行)旨が記載されているにすぎない。したがって、「彩色光を示さない高透過性で低い放射率をもつ赤外線反射性被覆ガラス」の創案を企図する当業者が、引用例2の記載から、引用例1記載の塩化錫を有機錫化合物に置換する動機付けを得ることはありえない。

したがって、引用例2の記載を論拠とする審決の上記判断は誤りであり、そのように誤った判断を前提とする請求項4に関する判断も誤りである。

(3)相違点2の判断の誤り

審決は、相違点2は実質上の差異ではない旨判断している。

しかしながら、引用例1記載の発明は、前記のように金属酸化物をガラス中に「溶解せしめる」ものであって、本願第1発明のようにガラスの表面に一定の厚さの金属膜を「付着させる」ものではないから、相違点2が実質上の差異でないとは到底いえない。

この点について、被告は、引用例1記載の発明によって得られるものは、たとえ金属の一部がガラス中に溶解することがあるとしても、それとは別に、「膜」あるいは「層」と認識されるものが存在する旨主張する。

しかしながら、引用例1においては、「膜」あるいは「層」はいずれもガラスの中に溶解され、ガラスの性質を改変するものとして記載されているのであるから、被告の上記主張は失当である。

第3  被告の主張

原告の主張1ないし3は認めるが、4(審決の取消事由)は争う。審決の認定判断は、正当であって、これを取り消すべき理由はない。

1  一致点の認定について

(1)原告は、本願第1発明と引用例1記載の発明は、対象とするガラスの種類を異にする、全く別個の系統に属する技術である旨主張する。

しかしながら、表面に酸化錫被覆を形成したガラスが赤外線反射性と導電特性を持つことは、本出願前に周知の事項である(なお、導電特性を持つということは、低抵抗、すなわち、低放射率を持つことにほかならない。)。したがって、本願発明によって得られるガラスと、引用例1記載の発明によって得られるガラスは実質的に相違するところがないから、原告の上記主張は失当である。

なお、処理ガラスの表面温度についてみると、引用例1記載の発明の特許請求の範囲1に「ガラスを600℃より高い温度に保持し」(14欄36行)と記載されているように、引用例1記載の発明においても、錫のような低融点の金属を処理金属とする場合には、処理ガラスの表面温度は600℃以上に保持されておれば十分である。一方、本願明細書には、処理ガラスの表面温度を高くすることによる利点が記載され(公告公報5欄13行ないし16行、7欄46行ないし48行)、かつ、「ガラス表面温度が好ましくは約621~677℃(中略)、最も好ましくは約649~677℃」(5欄23行ないし25行)と記載されているのであるから、両者の処理ガラスの表面温度が重複することは明らかである。

(2)原告は、本願第1発明が「非酸化性雰囲気下、(中略)ガラス表面上に酸化錫被覆を付着させる」のに対し、引用例1記載の発明は「酸化性条件下でガス状化合物による処理を行う」のであるから、本願第1発明と引用例1記載の発明は「熔融金属浴及びガラス基体上に非酸化性雰囲気を維持し、(中略)非酸化性雰囲気下、(中略)ガラス表面上に酸化錫被覆を形成させる」点で一致する旨の認定は誤りであり、そのように誤った認定を前提とする請求項3に関する判断も誤りである旨主張する。

しかしながら、いわゆるフロート法によってガラスを製造する場合、非酸化性雰囲気を維持して熔融金属の酸化を防止することは本出願前の技術常識であって、引用例1記載の発明においてもこの手段を講じられていると解すべきことは当然である。同時に、本願明細書に「ガラス帯の上表面を(中略)気化モノブチル三塩化錫で本質的に飽和したキャリヤー空気と(中略)接触させた。」(公報9欄2行ないし6行)と記載されているように、酸化錫被覆を付着するためには、ガラスの上表面が錫化合物を酸化するための酸素に曝されねばならないことも当然であるから、原告の上記主張は技術的に誤りである。

2  相違点1の判断について

原告は、引用例2記載の発明は本願第1発明あるいは引用例1記載の発明とは技術内容を異にするのみならず、引用例2には、無機錫化合物は避けるべきであり、有機錫化合物も好ましくないが、唯一、三塩化モノフェニル錫が特定の蒸着条件下で優れた被膜を与える旨が記載されているにすぎないから、「彩色光を示さない高透過性で低い放射率をもつ赤外線反射性被覆ガラス」の創案を企図する当業者が、引用例2の記載から、引用例1記載の塩化錫を有機錫化合物に置換する動機付けを得ることはありえない旨主張する。

しかしながら、引用例2に、「透明な曇りのない酸化錫被膜をガラス上に形成するため」に適する材料として有機錫化合物である三塩化モノフェニル錫が挙げられている以上、引用例1記載の無機錫化合物から有機錫化合物への置換を試みることには何の困難もありえないから、相違点1に係る審決の判断に誤りはない。

3  相違点2の判断について

原告は、引用例1記載の発明は金属酸化物をガラス中に「溶解せしめる」ものであって、本願第1発明のようにガラスの表面に一定の厚さの金属膜を「付着させる」ものではないから、相違点2が実質上の差異でないとは到底いえない旨主張する。

しかしながら、引用例1の「本発明により製造されるガラス物品は表面に溶解した酸化金属の連続膜を有するガラスとしても限定することができる。」(6欄22行ないし24行)、「ガラスに酸化錫の表面層を形成し」(12欄9行、10行)、「第二酸化錫の導電表面膜がガラスに生ずる。」(12欄19行、20行)との記載から明らかなように、引用例1記載の発明によって得られるものは、たとえ金属の一部がガラス中に溶解することがあるとしても、それとは別に、「膜」あるいは「層」と認識されるものが存在するのであるから、相違点2に係る審決の判断にも誤りはない(そもそも、前記のように、本願発明が好ましいとする処理ガラスの表面温度と、引用例1記載の発明の特許請求の範囲1に記載されている処理ガラスの表面温度とが重複している以上、それぞれの方法によって得られるものの性状が異なるとみるのは、不合理である。)。

理由

第1  原告の主張1(特許庁における手続の経緯)、2(本願発明の特許請求の範囲)及び3(審決の理由)は、被告も認めるところである。

第2  甲第3号証(公告公報)及び第4号証(手続補正書)によれば、本願発明の概要は次のとおりと認められる(別紙図面参照)。

(1)技術的課題(目的)

本願発明は、赤外線反射性被覆ガラス、特に、彩色光を示さない高透過性で低い放射率をもつ赤外線反射性被覆ガラスの製造方法に関するものである。なお、ここにいう「放射率」とは、放射により熱を放出する表面の相対的能力であって、ある表面から発する放射エネルギーの、同じ温度における黒体から発する放射エネルギーに対する比である(公報3欄12行ないし19行)。

酸化錫膜は、特に有効な赤外線反射性物体であるが、厚さが十分に均一でないと、見る方向によって多様な干渉色(彩色光)を示すので、実用的ではない。この彩色光は薄い被覆ならば現れないが、そのように薄い膜は赤外線反射性が不十分で、やはり実用に適さない(同3欄28行ないし36行)。

本願発明の目的は、彩色光を示さない赤外線反射性被覆ガラスの製造方法を提供することである。

(2)構成

上記の目的を達成するため、本願発明は、その特許請求の範囲記載の構成を採用したものであって(手続補正書3枚目2行ないし15行)、要するに、非酸化性雰囲気中において熔融金属浴上に支持されているフロートガラスの表面に、彩色光を示さない赤外線反射性の酸化錫膜を比較的厚く付着させる方法である(公報5欄10行ないし13行)。

(3)作用効果

本願発明の方法は、熔融金属浴上でガラスの表面を被覆するので、ガラスの表面温度が高いため、より低い放射率をもつ酸化錫被覆を得ることができる(公報5欄13行ないし16行)。

第3  そこで、原告主張の審決取消事由の当否について検討する。

1  一致点の認定について

(1)原告は、本願第1発明と引用例1記載の発明は、対象とするガラスの種類を異にする、全く別個の系統に属する技術である旨主張する。

検討すると、本願第1発明は前記のように「ガラス表面上に酸化錫被覆を付着させる方法」に関するものである。一方、甲第5号証によれば、引用例1記載の発明は「金属酸化物を(中略)ガラス表面中に溶解せしめる」(14欄38行ないし41行)方法に関するものであって、その金属酸化物の例として「酸化錫」(12欄10行)が挙げられていることが認められる。そうすると、本願第1発明の発明によって得られるガラスと、引用例1記載の方法によって得られるガラスは、全く同一、あるいは極めて近似した光学的性質を示すと考えるのは当然のことである。そして、審決は、「被覆を付着させる」ことと「表面中に溶解せしめる」こととの技術的意義の差異を相違点2として挙げているのであるから、本願第1発明と引用例1記載の発明が「ガラス表面上に酸化錫被覆を形成させる方法」という上位概念において一致するとした審決の認定は、基本的に正しいというべきである。

なお、本願第1発明と引用例1記載の発明は対象とするガラスの種類を異にするという原告の主張は、引用例1記載の発明の特許請求の範囲に「高熱ガラス」と記載されていることを論拠とするものと考えられる。

検討すると、前掲甲第3号証によれば、本願明細書には「ガラス表面温度が好ましくは約621~677℃(中略)、最も好ましくは約649~677℃」(公報5欄23行ないし25行)と記載されていることが認められる(なお、本願発明の特許請求の範囲の請求項5に、「ガラス表面温度が621~677℃(中略)の範囲にある、請求項1に記載の方法」と記載されていることは、前記のとおりである。)。一方、前掲甲第5号証によれば、引用例1の特許請求の範囲1には「ガラスを600℃より高い温度に保持し」(14欄36行)と記載されていることが認められる。このように、両者の処理ガラスの表面温度は重複することが明らかであるから、原告の上記主張は根拠がないといわざるをえない。

(2)原告は、本願第1発明が「非酸化性雰囲気下、(中略)ガラス表面上に酸化錫被覆を付着させる」のに対し、引用例1記載の発明は「酸化性条件下でガス状化合物による処理を行う」ものであるから、本願第1発明と引用例1記載の発明は「熔融金属浴及びガラス基体上に非酸化性雰囲気を維持し、(中略)非酸化性雰囲気下、(中略)ガラス表面上に酸化錫被覆を形成させる」点で一致する旨の審決の認定は誤りであり、これを前提とする請求項3に関する判断も誤りである旨主張する。

検討すると、いわゆるフロート法によってガラスを製造する場合、熔融金属の酸化を防止するために非酸化性雰囲気を維持すべきことは技術常識であるから、引用例1記載の発明もこの手段を講じていると考えるのは当然のことである。同時に、本願第1発明が「被覆反応体としての蒸気状の有機錫化合物」を「酸素含有キャリヤーガスと共に基体表面に供給し」て酸化錫被覆を得ている以上、処理工程のうち酸化に関わる部分(本願第1発明の実施例を示す別紙図面第1図のうち、同第2図記載の「被覆機」の部分)が酸化性条件下に置かれていることも当然であるから、原告の上記主張は明らかに失当である。

(3)以上のとおり、一致点に関する審決の認定に誤りはない。

2  相違点1の判断について

原告は、引用例2記載の発明は本願第1発明あるいは引用例1記載の発明とは技術内容を異にするのみならず、引用例2には、無機錫化合物は避けるべきであり、有機錫化合物も好ましくないが、唯一、三塩化モノフェニル錫が特定の蒸着条件下で優れた被膜を与える旨が記載されているにすぎないから、「彩色光を示さない高透過率で低い放射率をもつ赤外線反射性被覆ガラス」の創案を企図する当業者が、引用例2の記載から、引用例1記載の塩化錫を有機錫化合物に置換する動機付けを得ることはありえない旨主張する。

検討すると、甲第6号証によれば、引用例2記載の発明は「透明で曇りのない酸化錫被膜の形成方法」に関するものであって、次のような記載があることが認められる。

a  「三塩化モノフェニル錫を気化させ、その蒸気を、酸素含有雰囲気中において温度を高くした基体に接触させることを特徴とする、透明で曇りのない酸化錫被膜の形成方法」(10頁2行ないし6行)

b  「酸化錫被膜は(中略)非常に有効な作用を示すが、非常に限定的で困難な蒸着条件下で形成されない限り、系中にヘーズ、すなわち、曇りを生じさせる。そのため、(中略)四塩化錫又は他の同種のハロゲン化物含有化合物は避けることが得策とされている。」(1頁12行ないし18行)

c  「三塩化モノブチル錫から形成した酸化錫被膜は、あらゆる工程条件下で曇りを示し、また、四塩化錫、三臭化エチル錫、二塩化ジブチル錫、二塩化ジメチル錫、三塩化メチル錫、二塩化ジブチル錫、塩化トリブチル錫及びテトラブチル錫は、三塩化モノブチル錫と同等か又はそれよりも顕著な曇りを示す。更に、三塩化モノフェニル錫は、広範な蒸着条件下で、非常に優れた曇りのない被膜を与える。」(5頁下から10行ないし1行)

上記cの記載は、「透明で曇りのない酸化錫被膜」を得るためには三塩化モノフェニル錫が最も望ましく、三塩化モノブチル錫がこれに次ぎ、四塩化錫等は三塩化モノブチル錫と同等あるいはそれよりも望ましくないことを意味すると解される。

そうすると、引用例2記載の発明が本願第1発明及び引用例1記載の発明と極めて近似する技術に関する思想であることは明らかであり、かつ、引用例2には、酸化錫被膜を得るために有機錫化合物である三塩化モノフェニル錫あるいは三塩化モノブチル錫を使用することが記載されているのであるから、相違点1は当業者が容易にすることができた材料の選択にすぎない旨の審決の判断は正当である。

3  相違点2の判断について

原告は、引用例1記載の発明は金属酸化物をガラス中に「溶解せしめる」ものであって、本願第1発明のように一定の厚さの金属膜をガラスの表面に「付着させる」ものではないから、相違点2が実質上の差異でないとは到底いえない旨主張する。

しかしながら、相違点1に係る本願第1発明の構成(すなわち、被覆反応体を蒸気状の有機錫化合物とすること)を引用例1記載の発明に適用すれば、本願第1発明と引用例1記載の発明は、使用する材料においても、ガラス表面の温度を含む処理条件においても、何ら差異がないことに帰着する(相違点3に係る構成が実質上の相違点でないことは、原告も争わないところである。)。したがって、引用例1に、金属酸化物をガラスの表面に付着させることなくガラス中に完全に溶解させる特別の技術手段が記載されていない以上、本願第1発明の方法によって得られるガラスの性状と引用例1記載の方法によって得られるガラスの性状が異なると考えるべき理由はないといわざるをえない。結局、本願第1発明の特許請求の範囲に「ガラス表面上に酸化錫被覆を付着させる」と記載され、一方、引用例1記載の発明の特許請求の範囲1に「金属酸化物を(中略)ガラス表面中に溶解せしめる」と記載されているのは、単なる表現の差異にすぎないというべきである。

この点について、引用例1を検討すると、同記載の発明の特許請求の範囲における「生成する金属酸化物を別個の相として存在させることなしに高熱ガラス表面上でのみ形成させて」(14欄38行ないし40行)との記載は、「金属化合物蒸気がガラス表面に達する前に金属化合物蒸気と酸化性ガスとの間での反応が殆んど生じないようにするのが良い。」(2欄20行ないし23行)との記載に照らせば、生成する金属酸化物をガス中には存在させないようにし、ガラス表面上にのみ存在させることを意味すると解するのが相当である。また、通常は絶縁体であるガラスが導電特性を帯びるためには、導電性の物質が(仮にその一部はガラス中に溶解されるとしても)ガラス中に完全に埋没することなく、ガラスの表面に露出していなければならないことは技術的に自明であるから、引用例1の「塩化錫と酸素との反応によってガラスに酸化錫の表面層を形成し、これはガラス表面に導電特性を与える。」(12欄9行ないし11行)、「第一酸化錫蒸気は酸化されて第二酸化錫がガラス表面に生じ、この結果、第二酸化錫の導電表面膜がガラスに生ずる。」(12欄17行ないし20行)との記載が、ガラスの表面に、酸化錫あるいは第二酸化錫の「表面層」あるいは「表面膜」が露出している状態を意味することも明らかである。

以上のとおりであるから、相違点2は実質上の差異ではないとした審決の判断にも誤りはない。

4  以上のとおりであるから、本願第1発明の進歩性を否定した審決の認定判断は正当であって、審決には原告主張のような違法はない。

第4  よって、審決の違法を理由にその取消しを求める原告の請求は、理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担及び上告のための期間付加について行政事件訴訟法7条、民事訴訟法89条、96条の各規定を適用して、主文のとおり判決する。

(口頭弁論終結日 平成10年9月3日)

(裁判長裁判官 清永利亮 裁判官 春日民雄 裁判官 宍戸充)

別紙図面

<省略>

理由

1.手続きの経緯、本願発明

本願は、昭和63年7月14日の出願(優先権主張 1987年9月30日 米国)であって、その発明は、出願公告後、平成7年7月27日付手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲第1項~第6項に記載された次のとおりのものと認める。

(1)a.ガラス基体を熔融金属浴上に支持し、

b.熔融金属浴及びガラス基体上に非酸化性雰囲気を維持し、

c.前記熔融金属浴上に支持されていない表面上で、前記ガラス基体と被覆反応体として蒸気状の有機錫化合物とを接触させ、そして

d.ガラス基体が非酸化性雰囲気下、金属浴上に支持されている間に、前記被覆反応体を酸素含有キャリヤーガスと共に基体表面に供給し、熱的に反応させ、前記ガラス表面上に酸化錫膜を付着させる、

諸工程からなる、フロートガラス表面上に酸化錫被覆を付着させる方法。

(2)熔融金属が錫を含む、請求項1に記載の方法。

(3)雰囲気が窒素を含む、請求項1に記載の方法。

(4)有機錫化合物がモノブチル三塩化錫からなる、請求項1に記載の方法。

(5)ガラス表面の温度が621~677℃(1150~1250°F)の範囲にある、請求項1に記載の方法。

(6)キャリヤーガスが空気を含む、請求項1に記載の方法。

2.引用例

これに対して、特許異議申立人 日本板硝子株式会社が証拠として提示した、本願出願前に頒布された刊行物である甲第1号証(特公昭50-28963号、以下引用例1という)には、

1)「第5図はガラスを処理するに用いる元素がガラスの温度において融解する場合に用いる本発明の他の例を示す。溶融元素50、例えば、溶融錫を耐火材料で造った細長い舟内に入れ、この舟を炉構体を横切つて両側壁7間で溶融金属浴の表面11上に延長する。かようにして溶融金属の自由表面を被処理ガラス表面に極く接近させる。

L字形断面を有する耐火材フード52を舟50の上方で側壁7間に固着し、反応ガスを供給するシリカ管54の溝孔状出口53からフード52と舟50との間の空間内に供給される反応ガスの流れに対する間隙空間を舟の上方に残すようにする。フード52の脚55を被処理リボン状ガラスの上面38の近くにまで下方に延長し、脚55の前方に溝孔状出口57を有する扁平ガス供給ノズル56を取付ける。ノズル56に酸化性ガスを供給し、これを脚55の直ぐ下流のガラス表面においてフードから流下する蒸気と混合する。フードの下流端縁においてガラス表面の近くに取付けた排気ダクト61における溝孔60を経て使用ガスを吸入する。

シリカ管54に供給される反応ガスは5%の塩素と95%の窒素との混合ガスとし、このガスを溶融錫50の表面を横切って流す。これにより塩化錫蒸気を生じ、これは58で示すようにフードの脚55の内側に短かい下向流を有し、同じ温度で蒸気として流れる。酸素1%と窒素99%との混合ガスをノズル56に供給し、この混合ガスは脚55の足の下側を59で示すように流れて塩化錫ガス流58が脚55の足の下側を前方に移動するガラス表面と連続的に接触するガラス表面の区域の上方における酸化条件を制御する。この区域における塩化錫と酸素との反応によってガラスに酸化錫の表面層を形成し、これはガラス表面に導電特性を与える。

他の例においては、・・・(中略)・・第二酸化錫の導電表面膜がガラスに生ずる。」(第6頁左欄第20行~同頁右欄第20行)

2)「本発明方法によれば溶融金属の浴に沿ってガラスシートを個々に前進させ、酸化性条件下でガス状化合物による処理を行う囲いの下側に通過させることによってシート状の平坦ガラスに応用することができる。或は又、平坦ガラスを連続リボン形状で既知の浮遊法により溶融金属浴に沿って前進させることができ、浮遊法においては、リボン状ガラスを溶融金属浴の一端において浴表面に送出された溶融ガラスによって浴上に溶融ガラスの層を形成することによりリボン状ガラスを溶融金属表面上に形成する。・・・・(中略)・・・本発明を上述した浮遊法に応用するに当っては、ガラスの温度が約600℃以上であるリボン状ガラスの区域でリボン状ガラスの上面に対してガス流を加えるのが良い。通常、本発明はガラスが800℃~950℃の温度範囲にある浴の高熱端と称する浴の部分に応用される。

溶融金属浴を、溶融錫浴又は錫を主成分とする錫合金の溶融浴とすることができ、この溶融金属浴の上方に維持する保護雰囲気中には、・・・(中略)・・・処理帯域を通過した後の浮遊ガラスがまだ高熱である間に、ガラスの処理表面を還元性雰囲気に曝す。・・・(中略)・・・

処理ガラス表面を還元する必要がない場合には、例えば、窒素雰囲気のような不活性保護雰囲気を溶融金属浴の上方の上方空間内に維持する。」

(第2頁右欄第2~40行)

以上のことから、引用例1には、

「イ.リボン状ガラスを錫又は錫合金の溶融金属浴上に支持し、

ロ.溶融金属浴及びリボン状ガラス上に窒素雰囲気のような不活性保護雰囲気を保持し、

ハ.前記リボン状ガラスの上面で、600℃以上であるリボン状ガラスと塩化錫蒸気とを接触させ、そして、

ニ.リボン状ガラスが不活性保護雰囲気下、金属浴上に支持されている間に塩化錫蒸気を酸素と窒素との混合ガスと共にガラス表面に供給し、塩化錫と酸素との反応によってガラスに酸化錫の表面層を形成する、浮遊ガラス表面上に酸化錫の表面層を形成する方法」が記載されていると認められる。

3.対比

請求項1について、

まず、本願の請求項1に記載の発明(以下、前者という)と引用例1に開示されている発明(以下、後者という)を対比すると、

後者における「リボン状ガラス」、「溶融金属浴」、「窒素雰囲気のような不活性保護雰囲気」、「リボン状ガラスの上面」、「酸素と窒素との混合ガス」、「浮遊ガラス」、「酸化錫の表面層」は、それぞれ、前者における「ガラス基体」、「熔融金属浴」、「非酸化性雰囲気」、「熔融金属浴上に支持されていない表面」、「酸素含有キャリヤーガス」、「フロートガラス」、「酸化錫被覆」に相当し、また、後者における、酸化錫の表面層を形成するのに使用される「塩化錫蒸気」は、「被覆反応体としての蒸気状の錫化合物」に相当する。

してみると、前者と後者は、

「a.ガラス基体を熔融金属浴上に支持し、

b.熔融金属浴及びガラス基体上に非酸化性雰囲気を維持し、

c.前記熔融金属浴上に支持されていない表面上で、前記ガラス基体と被覆反応体として蒸気状の錫化合物とを接触させ、そして

d.ガラス基体が非酸化性雰囲気下、金属浴上に支持されている間に、前記被覆反応体を酸素含有キヤリヤーガスと共に基体表面に供給し、反応させ、前記ガラス表面上に酸化錫被覆を形成させる、フロートガラス表面上に酸化錫被覆を形成させる方法」点で一致する。

(相違点1)

蒸気状の錫化合物が、後者が、「塩化錫(実際には、溶融錫を出発原料とし、塩素ガスにより塩化錫として使用)」であるのに対して、前者では、「有機錫化合物」である点

(相違点2)

ガラスに形成される酸化錫被覆が、後者では、「ガラスに表面層として形成される」のに対して、前者では、「ガラス表面上に膜及び被覆として『付着』される」ものである点

(相違点3)

前者が、酸化錫膜をガラス表面に付着させる際に、錫化合物と酸素とを、「熱的に反応させる」としているのに対して、後者にはこの点が明記されていない点

で一応相違する。

4.当審の判断

そこで、これらの相違点について検討すると、相違点3について、

後者においても、処理されるガラスの表面温度は、600℃以上の高温に保持されているものであり、この高温下で酸化反応がなされているから、後者における、酸化錫の形成反応は「熱的に反応させている」ことに相当していると認められる。相違点2について

後者における「導電表面膜がガラスに生ずる」という記載からみて、塩化錫と酸素との反応によって形成される導電特性を有する酸化錫の表面層も酸化錫膜すなわち被覆がガラス表面に付着している状態であると解釈できるから、実質上この点で差違があるとは認められない。

相違点1について

特許異議申立人 日木板硝子株式会社が証拠として提示した、本願出願前にスイス国で頒布された刊行物である甲第2号証(国際特許公開第WO86/06658号、以下引用例2という)には、<1>「1 三塩化モノフエニル錫を気化させてその蒸気を基体に酸素含有雰囲気中において基体温度を高くして接触させることを特徴とする透明な曇りのない酸化錫被膜の形成方法。

・・・(中略)・・・

3 基体がガラスであることを特徴とする請求の範囲第1項記載の方法。」(第10頁第2行~同頁第 行)

<2>「本発明は、酸化錫被膜に関し、より詳しくは、透明な曇りのない酸化錫被膜をガラス上に形成するための化学蒸着方法に関する。」(第1頁第3~65行)

<3>「酸化錫被膜は、窓ガラス構造物において彩雲を減少又は消失させるためにも用いられる。この酸化錫被膜は所期の自的のために、非常に有効な作用を示すが、非常に限定的で不利な蒸着条件の下に形成されない限り、系中に曇りを生じさせる。そのため高温のガラス面に酸蒸気を生成することのある四塩化錫又は他の同種のハロゲン化物含有化合物はさけることが得策とされている。

気化された液状の三塩化モノフエニル錫から化学蒸着によって基体例えばガラス上に透明な曇りのない酸化錫被膜を形成する方法がここに提案される。

本発明の1つの特徴として、液状の三塩化モノフエニル錫は、低腐食性-低毒性であり、空気中で高い基体温度の下にすみやかに分解し、透明な曇りのない酸化錫被膜を形成する。この酸化錫被膜は、典型的には、1%よりも低い曇り率と、80%よりも高い可視光線の透過率とを有し、ガラス温度約450℃~650℃と、25秒よりも短い蒸着時間において、250nmまでの厚さにおいて得られる。」(第1頁第10行~第2頁第4行)

<4>「本発明の利点は、三塩化モノフエニル錫から得たガラス上の酸化錫被膜の曇り率と三塩化モノブチル錫から得た酸化錫被膜の曇り率との比較による下記特定的な実施例(表Ⅰ)及び或る範囲の工程条件に亘る三塩化モノフエニル錫から得た被膜の曇り率(表Ⅱ)を参照することによって直ちに明らかとなろう。表Ⅰ、Ⅱのデータから、三塩化モノフエニル錫から得た酸化錫被膜が、広範な工程条件の下に、1%よりも少ない曇りを示し、或る基体温度においては、無被覆ガラスの値に等しい量を示すことが明らかにされる。他方、三塩化モノブチル錫から形成した酸化錫被膜は、全ての工程条件の下に曇りを示す。また、四塩化錫、三臭化エチル錫、二塩化ジブチル錫、二塩化ジメチル錫、三塩化メチル錫、二酢酸ジブチル錫、塩化トリブチル錫、及びテトラブチル錫を使用して得た被膜は、全て、三塩化モノブチル錫と同等かまたはそれよりも著しい曇りを示す。」(第4頁第7~14行及び第5頁第18~31行)

<5>表Ⅰには、三塩化モノフエニル錫(MTPC)及び三塩化モノブチル錫(MBTC)から得た酸化錫の被膜の曇り量というタイトルの下に、実施例1として、濃度(mol/l)で0.079、基体温度(℃)で600、曇り率がMPTCは、0.90、MBTCが5.5であること、被膜の厚さは、190nm、蒸着時間は、MPTCでは、6-22秒、MBTCでは、7-9秒、可視光線透過率は、MPTCでは、80%、MBTCでは、75%であることが記載されている。

<6>「キャリヤガスは、好ましくは空気であってもよい酸素含有ガス又は酸素と不活性ガスとの混合物、好ましくは空気である。」(第3頁第12~14行)なる記載がなされている。

以上、引用例2の記載からすると、「ガラス基体表面に酸化錫の被膜を形成する場合に、有機錫化合物に属するものである、三塩化モノブチル錫、三塩化モノフエニル錫等を錫化合物とし、その化合物の蒸気を高温に保たれたガラス基体に酸素含有雰囲気下に接触させることによる」ことが公知であったと認められる。

そして、引用例2は、酸化錫被膜を形成する材料の錫化合物としての、四塩化錫、三塩化モノブチル錫は、曇りを生じるものの、被膜形成材として同等に使用され得る旨記載しているから、引用例1における塩化錫(即ち、四塩化錫)に換えて、三塩化モノブチル錫の使用は、当業者が容易になし得た程度のことと認められる。

更に、引用例2は、「高温のガラス面に酸蒸気を生成することのある四塩化錫又は他の同種のハロゲン化物含有化合物はさけることが得策とされている。」と記載した上で、三塩化モノフエニル錫を錫化合物として使用することを推奨するものであるから、錫化合物として引用例1に記載される塩化錫に換え、その使用が推奨されている有機錫化合物に属する三塩化モノブエニル錫を用いることは当業者が容易になし、得たことと認められる。

したがって、上記相違点は、引用例2の記載を考慮すると、当業者が容易に選定し得る材料の選択にすぎないと認められる。

よって、請求項1に記載の発明は、当業者が引用例1及び2の記載に基づき容易に発明することができたものと認められる。

請求項2について、

引用例1における、「溶融金属浴」には、金属として「錫」が記載されているから、前記第1項記載の発明に対して示したのと同様の理由で、請求項2に記載の発明は、当業者が引用例1及び2の記載に基づき容易に発明することができたものであると認められる。

請求項3について、

引用例1における、「保護雰囲気」には、「窒素雰囲気」が具体的に記載されているから、前記第1項記載の発明に対して示したのと同様の理由で、請求項3に記載の発明は、当業者が引用例1及び2の記載に基づき容易に発明することができたものあると認められる。

請求項4について、

引用例2には、モノブチル三塩化錫と同義の三塩化モノブチル錫を酸化錫被膜の形成材とすることが、記載されているから、前記第1項記載の発明に対して示したのと同様の理由で、請求項4に記載した発明は、当業者が引用例1及び2の記載に基づき容易に発明することができたものと認められる。

請求項5について、

引用例1には、高温に保持されてガラス表面の温度は、600℃より高い温度とされている上、引用例2において、基体温度として、650℃の温度が明記されているから、請求項5における、温度条件の621~677℃は、適宜、当業者が選定し得た程度のことと認められる。

請求項6について、

引用例2には、キャリヤガスとして「空気であってもよい酸素含有ガス」が記載されているから、前記第1項記載の発明に対して示したのと同様の理由で、請求項6に記載されて発明は、当業者が引用例1及び2の記載に基づき容易に発明することができたものと認められる。

5.むすび

したがって、請求項1~6に記載された発明は、いずれも、引用例1及び2に記載された発明に基づき当業者が容易に発明することができたものと認められる。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例